【2014年度 大谷大学文藝コンテスト総評】

【2014年度 大谷大学文藝コンテスト総評】

今年、第2回を迎えた「大谷大学エッセイ・コンテスト」は、「エッセイ」部門に加えて「小説」部門を新設することとなった。昨年の講評でも述べた通り、第1回は「エッセイ・コンテスト」と銘打っていたにもかかわらず、応募作品の中に「小説」またはそれに類するものが多々混入していた。そこで、若々しい想像力や実験的な表現を受けとめるには「創作」部門も不可欠だと考えた次第。「エッセイ・コンテスト」から「文藝コンテスト」への名称変更は、この2部門併設に伴う措置である。

今回の応募作品数は、「小説」部門75、「エッセイ」部門266であった。筆力と個性に自信がある人はここぞとばかり、「400字詰原稿用紙20枚以内」という規定のある「小説」に取り組んだのだろう。一方、日常生活の中から細やかな思索や感情を掬い上げた「エッセイ」の数も昨年より大幅に増えており、高校生ひとりひとりが抱えている表現への熱い志向を改めて確認することができた。

まず、「エッセイ」部門について述べよう。応募作品を見渡すと、祖父母や父母をはじめとする家族への思いを語ったもの、スポーツや音楽などの部活を巡る喜怒哀楽をまとめたもの、ケータイ・スマートフォン・タブレットなどの可能性と問題点について考察したもの、テーマの点から言えばこれら3つのタイプが際立って多かった。高校生の日常的関心が奈辺にあるかを示して余りある結果であり、もちろん、こうしたテーマを取り上げること自体はごく自然な行為である。だが、今回の応募作品において顕著だったのは、テーマの共通性・類似性が思考や感覚の共通性・類似性にほぼそのまま転化していたことである。要するに、大同小異の文章が並んでしまったということだ。これでは個性の発現どころではない。論じる要素を核に据えた「エッセイ」の場合、文章を光らせるのは筆者独自の見解である。家族も部活もスマホも、高校生にとっては一日たりとも密接に関係せずにはいられない対象であろう。だからこそマスコミも含めた大人の意見の受け売りではなく、自分の実感に基づいた新鮮な捉え方を提示してほしかった。

上記のテーマに限らず、「笑顔」と「挨拶」の大切さを主張する文章も目立った。これはいかにも真っ当な主張だけれども、真っ当ゆえに物足りない主張でもある。「笑顔」と「挨拶」だけでは解決できない局面が世の中にはたくさんある。そういう状況に直面したときどうすればいいのか。「笑顔」と「挨拶」の大切さを説くことより、この問題を考えることの方が大切なのではないだろうか。無意識のうちに惰性的になっている自分の思考法を払拭して、独自の考えを探索し、それを展開することを目指してほしい。もう一つ付け加えると、「エッセイ」は、ストーリーやイメージや方法などが控えめな分だけ、「小説」よりも文体そのものの完成度が問われるジャンルである。文体をおろそかにした文章は筆者の人格を疑わせる。今回、「エッセイ」部門では、テーマ・考え方・文体の3点いずれも最優秀に値する、という応募作品は見出すことができなかった。

次に小説だが、これは一言二言で済ませたい。というのも、今回は審査員を欣喜雀躍させるような絶品があり、また多くの面で意匠を凝らした佳作が何篇もあり、これ以上何か注文をつけてはかえって未来の応募者の意欲を損ねるのではないかと危惧されるからである。ただし、応募作品全般に以下の設定・要素が頻出する点はいささか気になった。作者が人物造型やストーリー展開を考える際、安易にこれらの設定や要素を利用しているとしたら問題である。以下、その設定・要素を列挙する。

2人の対話(3人以上の会話を組み立てるのは難しいのかもしれない。だが3人以上の関わり合いは場面を大きく動かす力になるし、作品空間の彫りを深くする。ぜひ挑戦してほしい)。別れ(卒業・引っ越し・死別)。優しい。微笑。ありがとう。涙。友だち。恋人。(部活の)先輩と後輩。大人の大人らしくない口調(職務中なのに高校生のように喋る医者や刑事はやはり不自然)。

なお、応募作品の中にはミステリー・ホラー・スラップスティック(ドタバタ喜劇)・時代小説などに区分されるものも少なくなかったが、そのうち最終選考まで残った作品は僅かだった。審査する側は、この種の小説には無条件に楽しませてもらいたいと思っている。だから語彙や語法が不安定だったり、場面設定や人物描写が不正確だったり、時代考証や謎解きが不十分だったりすると、裏切られたような気分になり、評価は自ずから厳しくなってしまう。決してミステリーやホラーを毛嫌いしているとかスラップスティックを格下と見なしているとか、そういうわけではないのだ。むしろこういうジャンルの傑作が現れることを内心では期待しているのである。

今回から作品は高校ごとに取りまとめて応募することとなり、複数の作品を扱われた担当の先生には昨年以上のお手数をおかけした。末筆ながら、この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

 審査委員長 國中 治