【エッセイ部門・優秀賞】緑の訪問者

神戸市立神港橘高等学校第1学年 内倉 一綾

元旦の夕方だったと思う。年始の挨拶に祖母の家へ行くと、私以外の家族はもう先に来ていて、お節料理やお雑煮を食べていた。私は自分のお雑煮が出来るまで、コタツに入りテレビを見ていると、ベランダの窓に何かが当たる音がした。硬い物が当たる音に近く、祖母に「風が強くてハンガーが窓に当たったのかな?」と言うと祖母は「外には何も干してないよ」と言う。不思議に思いベランダの窓を見ていたら、また何かが窓に当たった。今度ははっきりと見えた。緑色の鮮やかな何かが網戸にひっかかっている。
私は祖母にそのことを伝えると、祖母はベランダの窓を開けて外へ出た。そして祖母はひと言「え?」と言った。
次の瞬間、その緑色が部屋の中へ飛び込んできた。今まで何の関心も示さなかった私の家族は、その緑色の襲来に一同一斉に騒ぎ、その声に驚いた緑色は部屋中を飛び回っている。飼っている犬は暴れまわる緑色から身を潜める様に玄関へ逃げ、気が付くと私の兄の姿はなく、私の母の頭の上に緑色が止まっている。
「インコ!!」「嘘やろ」「どうにかして」とお正月らしく賑やかになった。その緑色のインコは風に飛ばされた羽が逆立っていた。人に慣れているのか、すぐに指に止まり、鳴き出した。初めて見るものばかりのインコは、肩から頭へ移動したりと落ち着かない。
しばらく私と母と祖母は微動だにせず、インコの止まり木を各々やっていたが、この寒い中、そんな遠くからは飛ばされてこないだろうという結果、同じマンションの部屋から逃げ出したに違いないと、一軒ずつマンションの住人を訪ねることにした。「マンションの入口のオートロックのインターホンなら、一度に全住居、確認出来るね、頭がいいね」と自画自賛しながら母が勇んで出て行ったが、数十分後、寒さにふるえて母が戻ってきた。「お正月早々、自宅におられた方は半数以下で、また在宅の方へインターホン越しにインコの話をしても、年始早々怪訝な返答をされ怪しまれた」とガッカリしていた。
その後、母は交番へ行き、インコの状況の説明をし届出をして戻ってきたが、結局祖母の家でしばらく預ることになった。
その日はプラスチックケースを重ねた臨時の鳥カゴで過ごし、翌日には立派な鳥カゴを用意してもらえ、インコは鳥のエサを食べていた。高齢の方が飼っていたのか、鳥カゴに入れると騒ぎ、部屋へ放鳥すると静かにカーテンレールや肩に止まっている。うちの家族にも慣れてきたのか、遊んでほしいとインコは私の腕に止まり指をかんでくる。
でもインコに名前は付けていない。飼い主にインコを返せなくなりそうだからだ。
インコの話を他の人へすると「幸せの青い鳥みたいね」とか「お正月から縁起がいいね」と言ってくれる。そんな事は関係ないと言わんばかりに、インコは独り言で何かをしゃべっている。鳥カゴに入れようと捕まえた時は文句も言うようになり、ついつい笑ってしまう。
「飼い主さんへ、インコを大切に預っていますので、なるべくゆっくり迎えに来て下さい。」と玄関へ貼り紙を書いた。