優秀賞  照らされる道

 

優秀賞  照らされる道    宮城県農業高等学校3年 寺井 澪

 

赤く染められた空を見ながら悔しさと惨めさで涙が止まらなかった。
「私は何をしているんだろう」そんな思いが心を埋め尽くしていた。

この日、静岡県で高校生パンコンテストが開催された。私は一次審査で敗退したが、
友人は最終審査まで残り特別賞を受賞した。しかし、私は心の底から「おめでとう」と祝福
してあげることはできなかった。結果発表までは「勝って欲しい」と願っていたのに…賞状を
受け取る友達を見ていると、何も受賞できなかった自分の惨めさと情けなさが込み上げて
きたのだ。

私は料理好きが講じて二年生から「食」のコンテストに友達と多数応募してきた。全国で
賞を取る友達を目の当たりにしながら、私は全てが予選敗退。いつしか「私は疫病神なの
かな」と母親に漏らすほど、心はすさみ深い闇に閉ざされていった。

ある日、先生からの勧めで「ご当地!絶品うまいもん甲子園」というコンテストを知った。
私が考えたアイディアを先生に言うと「斬新だ。作ってみろ」と背中を押され、友達四人で
試作することに。

餃子の皮に野菜を練り込むことでオレンジ、黄、紫、緑の色をつけて一つ一つ味も違う四色
のカラフルな餃子を作った。それをドンブリに入れて柚子スープを注いでからパイ包みにする
「伊達なハイカラぎょーざ」を完成させた。

しかし、ここで問題が発生。一チーム三人での参加のため、誰かが抜けなければ応募
できないことが分かった。悩んだ末、自分が抜ける事に…結果を残さなない自分に自信が
持てなかったため、「私がいると勝てないから抜けます」と先生に伝えた。その時は険しい
表情をしただけで何も言われなかった。自分から言い出したことなのに何故か虚しく悲しさに
押し潰されそうになった。「これでいいんだ。みんなの為…」自分にそう言い聞かせてその場
を後にした。

その夜、一本の電話があった。先生からだった…「馬鹿じゃないのか。お前が考えた料理だろ」
と一喝された。その瞬間、本心はその言葉を待っていたことに気がついた。誰かに気づいて、
引き止めて欲しかった。その時、私は大声で泣いた。

それからチームが決まり書類を提出。作品には自信があったが、「また書類選考で落ちるのかな」
そんな不安は拭いきれなかった。

ある日、先生から「予選通過したよ。次は東北大会だ」と言われ、初めて勝利を噛み締めた。
しかし「これはマグレ」と思っていた。私は度重なる敗北から、自分自身を信じることが出来なく
なっていたのだ。

そんな自分が嫌いだった。変えたかった。限界という殻を破りたかった。そうか、私の敵は他の
学生ではなくて自分自身だったんだ。それに気がついた時、もう後ろを向かず、最後まで全力で
取り組むことを決意した。

それからは休みを返上して練習に励み東北大会に挑んだ。結果は二位通過で全国大会の切符
を手にした。初めて手に入れた光。「私でも勝てるんだ」という自信をもてたことがとても嬉しかった。
それからは「全国に行くのなら賞を取って見せる」と意気込み、毎日夜遅くまで改良し続けた。

十一月二日全国大会当日。くしくもこの日は私がコンテストに参加するようになってちょうど一年。
負け続けた日が始まった日。

調理が始まり今までの成果をすべて本番にぶつけるつもりだったが、緊張から練習通りにできず、
パイ生地が割れて見た目が悪くなってしまった。その瞬間「またか…やっぱり私はダメなんだ」
溢れそうになる涙をこらえながらも終了の合図がなるまでできる限りのことをし尽くした。

審査員の試食が終わり、そして結果発表。特別賞、準優勝と次々と選ばれていく中、私たちの
高校名は聞けなかった。「今回もだめだった…自分のミスのせいでみんなの足を引っ張ってしまった」
と自責の念に駆られていた。「優勝は伊達なハイカラぎょーざ」始めは司会者の声に気がつくこと
ができなかった。そう、私たちは優勝した。一瞬で涙と喜びに包み込まれた。今までは悲しい涙。
だけど、今回初めての嬉し涙だ。

その時、自分のなかで大きく崩れた音がした。私の殻が壊れる音。この日を境に「自分は負ける」
という言葉を言わなくなった。

私は今まで抜け出すことの出来ない暗く深い闇を一人歩いていた。一度転べば立ち上がれない
ぐらい辛かった道。だが今は希望という光が私の道を照らしてくれる。気がつくと周りには仲間が居
てくれた。

私は今、一年前と同じように空を見つめている。だか、それは赤く染まった悲しい空ではなく、明るく
暖かい眩しい太陽の光だ。今の私には悔しかったあの頃の記憶も、いい記録として心に刻んでしま
っておける。

餃子
伊達なハイカラぎょーざ

優勝
優勝の瞬間(中央が寺井)

 

************************
作品に対するコメント
津村記久子さん(小説家 2009年芥川賞受賞 国際文化学科卒)

寺井 澪さんの作品は、自分で掴んだ体験における心の浮き沈みがよく書けていると思います。