最優秀賞 砂浜の発掘現場

 

最優秀賞 砂浜の発掘現場   東京都立一橋高等学校1年 有永 琴音

 

 私がまだ小学校低学年の頃、プライベートビーチと呼んでいた砂浜があった。私有地と
いうわけではなく、海水浴場から少し外れた人気のない砂浜のことだ。水が透き通っていて
綺麗というわけでもない。テトラポッドが散乱していたのでテトラポッドにくっついている貝殻
で足を切ることもしばしばあった。そんな褒めどころの少ない砂浜は台風のあと少し変わった
発掘現場へと変わる。

 潮の流れの関係なのかは分からないがその砂浜は台風の跡になると沢山の流木やペット
ボトル、海草が浜辺に打ち上げられていた。

 その間に光る小さいものが落ちているときがある。ガラスの破片でできた海からの贈り物、
シーグラス。シーグラスとはビンなどのガラスや陶器の破片が自然の力で角や表面が削れ
丸み帯びた形になったもののことだ。シーグラスを趣味として集める人もいる。私もその1人
だった。

 小さかった私はそのガラスはいったいどこから流れてくるのか不思議に思っていた。
シーグラスにはどこからやってきたか、どのようにして流れ着いてたかが書かれていないからだ。

 しかし、どこから流れ着いたか明確に分かるものもその砂浜には落ちていた。

 海外からやってきたであろうお菓子の缶や、袋。ジュースの缶。ビニール袋。様々な
海外のゴミが山形県の小さな砂浜に打ち上げられていた。

 今思うとゴミを海に捨てるなと思うが当時の私はそれにはどんなものが入っていたのか、
このお菓子はどんな味がするのか、そんなことばかり考えていた。中身が残っているが、
見た目的に腐っていないお菓子も多々あり、何度か口に運ぼうとしたがその度に友達に止められた。

 その海外のゴミは私が海外に興味を持つ第一歩となったかも知れない。

ゴミを捨てた人たちには感謝していないが、その時のゴミと発掘現場となった砂浜には今でも感謝している。

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作品に対するコメント
津村記久子さん(小説家 2009年芥川賞受賞 国際文化学科卒)

有永 琴音さんの作品は、短く物足りない部分もあるのですが、何を取り上げるかの視点の面白さと、
文章の歯切れの良さが合致していて、読んでいて心地好いものがありました。

審査したどの作品も、文章がきちんとしていて驚きました。それを土台に、それぞれの個性を伸ばして
いただきたいと思います。